高密度化に伴う発熱は、新たなボトルネックとなっています。こうした課題に対し、どのような液冷および排熱戦略が最適なのでしょうか。
データセンターにおける液冷システムの設計は、稼働率、効率性、そして拡張性に直接影響を与えます。ラック密度が200kWに達し、AIチップの熱設計電力(TDP)が1000Wを超える中、冷却は冷却分配ユニット(CDU)を中心としたアーキテクチャ設計から始まります。
CDUの構成は、熱をどのように移動させるか、どこで排出するか、そしてそれを支えるシステム構成を左右します。
また、CDUの構成選択は、エアフローの設計、流体インターフェースの適合性、スペース効率、さらにはサイト固有の冷却インフラとの整合性といった、重要な熱管理要素にも影響を与えます。最適なアーキテクチャを選定するには、それぞれがどのように熱を処理し、それが拡張性や高密度化、インフラ設計にどのような影響を与えるかを理解することが重要です。

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すべての液冷導入は、ひとつの問いから始まります。システム内で、熱をどのように移動させるか。本稿では、CDUとは何か、その仕組み、利用可能な種類、そしてそれぞれが最も効果を発揮する適用領域について解説します。
排熱方式の種類
Liquid-to-Liquid CDU
Liquid-to-Liquid CDU(図1参照)は、プレート式熱交換器を介して、IT機器からの熱を施設側の冷水供給(FWS)へと移動させます。専用の二次ループ、またはテクノロジー冷却システム(TCS)がサーバーのコールドプレート内を循環し、熱を吸収した後、CDUへ戻ります。これら2つのループは水理的に分離されており、冷却液が混ざることはありません。Liquid-to-Liquid CDUでは、熱を適切に排熱するために冷水インフラが必要です。既存の設備がないデータセンターでは、液冷導入にあたり、大規模な配管やポンプの設置が必要となる場合があります。
図1. Vertiv™ CoolChip CDU 2300は、高密度環境において効率的なLiquid-to-Liquid熱交換を実現するよう設計されています。
Liquid-to-Air CDU
Liquid-to-Air CDU(図2参照)は、熱交換コイルを通じて熱を放散し、ファンによって流体を冷却することで、冷水システムがなくても運用が可能です。これにより、既存の空冷インフラを活用でき、導入の簡素化と初期コストの削減につながります。一方で、Liquid-to-Air CDUとLiquid-to-Liquid CDUでは、熱性能の特性が大きく異なる点に注意が必要です。これらの違いは、各用途における運用要件に照らして評価し、適切かつ信頼性のある性能比較を行う必要があります。
図2. Vertiv™ CoolChip CDU70は、チップ冷却のためのLiquid-to-Air熱交換器として機能します。
Liquid-to-Refrigerant CDU
Liquid-to-Refrigerant CDU(図3参照)は、直接膨張(DX)方式の冷媒技術を用いて、データセンターから熱を排出します。これらのシステムはモジュール型の導入に対応しており、必要な場所に必要な分だけ液冷能力を展開できるほか、ポンプレス冷媒エコノマイゼーション(PRE)により効率の最大化を図ります。
図3. Vertiv™ CoolPhase CDUは、空冷環境における液冷導入の障壁を解消するよう設計されたLiquid-to-Refrigerant CDUです。
動画を見る:AI導入を加速するハイブリッド液冷技術|Vertiv™ CoolPhase CDU
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CDU構成の比較
In-Rack CDU
In-Rack CDU(ラックマウント型CDU、図4参照)は、CDUをラック内に組み込むことで、局所的な冷却を実現します。これにより、ラック単位での熱制御が可能となり、施設側の液冷インフラが限られるエッジ環境や既存設備への後付け導入にも適しています。また、万が一冷却に障害が発生した場合でも、影響を複数ラックではなく単一ラックに限定できます。この設計はシステム間の依存関係を低減する一方で、ラック内部の機械的な構成が複雑になり、ケーブルマネジメントやエアフロー、保守性に影響を与える可能性があります。また、容量に制約があるため、大規模な展開には適さない場合があります。
図4 Vertiv™ CoolChip CDU 100は、単一ラックのDirect-to-Chip冷却向けに設計されたIn-Rack型CDUです。二次冷却流体の容量を低減し、Liquid-to-Liquid熱交換により100kWの液冷を提供するインフラを簡素化します。
In-Row CDU
In-Row CDU(図5参照)は、ラック間に配置することで冷却を集約し、ラック単位での制御と共有インフラのバランスを実現します。CDUの設置台数を削減しつつ、拡張性のある液体分配を可能にします。この構成はハイブリッド冷却戦略に対応できますが、熱の偏りを防ぎ、冗長性を維持するためには、慎重な設計が求められます。特に、高密度でスペースが限られる環境では、配管ルートの設計、保守アクセスの確保、障害影響範囲の分離が重要な検討ポイントとなります。

図5. Vertiv™ Liebert® XDU450 CDUの設置イメージ(3Dレンダリング)
Gallery CDU
Gallery CDUは、施設の外周や機械設備エリアに設置される、施設全体を対象とした冷却システムです。高度な監視機能と統合された分配制御により、大規模かつ高密度な環境でも効率的な熱管理を実現します。また、動的な負荷分散に対応し、施設側の制御システムとも連携します。一方で、レイアウト設計、配管計画、制御ロジックに関する綿密な設計が求められ、システム全体での冷却を運用するためには、より高度な運用体制が前提となります。
| CDUタイプ | 特長 | 検討ポイント | 適用用途 |
|---|---|---|---|
| In-Rack(ラック内) | - ラック単位での冷却 - 短い流体ループ - 設置の簡素化・標準化 |
- ラックスペースを占有 - 台数増加による保守負担 - 導入規模により性能指標が変動 |
- 小規模/GPU高密度構成 - 混在環境 - 迅速な展開 |
| In-Row(列内) | - 複数ラックの冷却に対応 - 管理対象ユニットの削減 - モジュール設計による拡張性 |
- 配管工事が増加 - 中央障害リスク - 負荷分散設計が必要 |
- 高密度ラック環境 - 小規模〜大規模データセンター - 柔軟で拡張性のある冷却能力 |
| Gallery(ギャラリー) | - 複数のラック列を冷却 - 拡張性の高いアーキテクチャ - 統合されたシステム制御 |
- 設置・保守コストが高い - 外周/ギャラリースペースが必要 - 運用が複雑 |
- 大規模構成 - 高密度環境 - 集中型冷却設計 |
液冷アーキテクチャのまとめ
排熱戦略は、設計や導入モデルによって、その複雑さや拡張性、エネルギー効率が異なります。CDUの構成もそれぞれ異なるスケーリング特性を持ち、フロアレイアウトに応じた適用が求められます。冷却設計は、特に高い熱負荷が想定される環境において、現在の施設条件や運用要件と整合させることが重要です。
高密度に対応する設計、将来の拡張を見据えた計画を
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